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Vol.10≪商店主の真のニーズは≫
日本工業新聞/平成3年(1991年)8月21日(水)
たばこ以外の自販機も、普及率の上昇で、需要が頭打ちになってきた。たばこ自販機は、たばこのメーカーや大手たばこオペレーターが一括購入して配置する時代になっている。自販機業界は買い手市場の様相をみせ価格競争が激しくなってきた。
このころ、保治は、社員にしきりに「脱惰性」を説いている。
これまでのどおりのやり方でなく、時代の変化をよみとって自分も変わらなきゃいかん。たとえば、滝の水の落ちる場所が変わってきたと思え、前と同じ場所にコップをおいて水を受けようとしても、しずくしか入らないぞ。昭和58年度には前年比に比べ純益は上回ったものの、総売り上げで減少をみた。59年度の経営政策発表は厳しいものとなった。
「わが社の販売網やサービス網、人員、資本形態をみると、何ひとつ大手企業にひけをとるものではない。しかるになぜ頭打ちとなるか。わが社が、たばこ関連を中心に伸びてきたため、たばこ自販機を売るための形態にしかなっていないからだ。いまの時代は産業革命に匹敵する革新の時代だ。いままでの路線は滅亡の道なんだ。脱惰性で、行動を起こそう」
この前後から、フジタカは急速に業態を多方面に展開する。ここで保治自身の解説によって、どのような経緯で、事業展開の発想を得るのか、その1つの例をみてみよう。「あるとき私は、小売商店主のニーズはなにかを考えようとしました。
フジタカは木工店の昔から商店との接触が多いんです。たばこのウィンドーを作る。店舗を作るところからやってきましたから」
「スーパーマーケットが伸びる時代には、コールドチェーン関連の冷凍ショーケースをてがけることなどもして、大型店との接触もできております」
「そこで気がつきますのは、商店というのはこのままでは衰退していく存在じゃなかろうか、いや衰退要因をいっぱい抱えて、悩んでいる存在である、ということでした」
「構造的に申しまして、商店は2世が跡を継ごうとすることが少ない業界です。よほどのことがないと。それに、大型店がどんどんできますから経営を圧迫されます。食料品メーカーもこれまで商店第一であったのが、大型店のほうが大量に消化できますので、大型店重視になってきます。
また、これまでは法的に保護されてきた業種も、規制が緩和されてきまして、ますます大型店に押されて来る状況がでてくる。商店というのは経営が非常に難しい時代になってきているのですね」
「私たち、そういうお店に伺い、お店を改装しませんかとセールスしています。商店に買っていただいて企業を成立させているんです。そこで気がつきますのは、商店の方がほんとうに欲していらっしゃるのは、自販機やショーケースではなさそうだな、ということでした」
「では『何か』と申しますと商店の方のほんとうのニーズは、『この商売が明日も続けられるだろうか』という不安の解消、だったんですね」
保治がいつも胸に秘めている命題、゛いまの繁栄が明日も当然続くということはないんだ″と、共通する存在についての不安を、商店主は抱えている。その解消こそ商店のニーズだと気付いた。<敬称略>

<文・村上 順一郎>

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