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Vol.15≪これから≫
日本工業新聞/平成3年(1991年)8月29日(木)
はたちで父の木工店に参加して39年。保治の仮説は独創的で、以前に立てた仮説と矛盾するように見えることもあった。にもかかわらず、フジタカは社会のトレンドの数歩先を歩き、いま売上高1千億円をめざす先端企業グループに成長している。
もともと保治は先見性に富んでいた、と古参社員はいう。誰も保治の針路を予想できなかったが、ついていくと保治の予測(仮説)は的中していた。
保治はよく勉強する人であったと中堅以上の社員はいう。現在、指導的な立場にある幾人か、たとえば前出の常務・中川、同・仲村や取締役・田中晃(製造部長兼信頼性本部長)は若い日、毎月1回、保治宅に集められた勉強会を忘れない。矢のように質問を浴びせられ、山のように宿題を与えられ「根本から鍛え直された」という。
保治はいまも午前2時、3時まで読書にふける。
読書傾向が偏らないよう岩波新書と中公新書、講談社現代新書の新刊が出ると必ず目を通す。
ただ、書斎の勉強家ではなく、実業家の勉強である。何かを感じるとすぐ、事業に応用する。
病院の入院病棟で配膳設備が気になると、配膳装置の開発を指示した。そして、病院給食を熱いものは熱いまま、冷たいものは冷たいまま、つまりおいしい状態で患者の枕元へ届ける適温配膳車を作った。
たばこ店は町の要(かなめ)にあり、さまざまなニーズが集中する場所だと感じると、それに対応する新製品を作った。たばこ自販機と、コインロッカー、郵便や宅配物の受け取りを代行するパーソナルボックスを組み合わせた「繁ジョーンズ」である。
女性が強くなる傾向が深まる、外食の習慣が増える。では外食産業を体験しようと、レストランやうどんの店を手に入れ、パイロットショップ的に経営している。女性営業専門職も、全国で活躍中である。
また、努力家でもある。40歳から始めた英会話は海外旅行や商談で不自由しない域に達している。
保治には決断力があった、と古い取引関係者はいう。勉強と経験の蓄積の上で見事な決断をする。
この経営者に必須の決断という能力について、保治は「私も、重要な決断を要する場面に何度か遭遇したが、最終的には私自身の゛やろかっ"という気力で決意した」という。決断にいたる経過や内容を評価されるのはむしろ面はゆいという表情になる。
では何が成功の主要な原動力となるのか。保治の言葉通り書くと「私にツキがあっただけ。運がよかった。それと社員が信頼し努力してくれた」
となれば、これからもツキと運、社員との信頼関係は大切にしなくてはならない。「そうなんです。でも、私は自分のツキは使い切ったような気がします。いつまでもツキまくるわけがない」
では、これからどうするのか。
「ツカナイ者向きの経営をしたい。自分のツキは使い切った、これからはツキのある人にのっかっていく、ツキのある人間を使いまくる。私はツイテイル者を見分ける目だけは持とうと考えています」
30年来の友人である三洋電機専務・関戸良雄はこういう。「ゆとりが、あるんです高井社長は。あれだけ、いそがしいのに。とてもかないませんねえ。社内の人材も機構も充実してきましたし、フジタカさんは前途洋々でしょう」<敬称略>

<文・村上 順一郎>

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