• 店舗の窓から備忘録

阪神タイガース、日本一のセール。

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阪神タイガース、日本一のセール。

2023年の11月5日、プロ野球の日本シリーズは第7戦で阪神タイガースが勝ち、38年ぶりの日本一を決めた。

翌日の大阪北区の阪神梅田本店では、開店前にセレモニーが行われ、店舗の前には2,000人の長い列ができ、通常より40分早い午前9時20分に開店したらしい。皆さんの想像通り、関西人の光景だったのだろう。

さて阪急阪神グループとは別で、タイガースと言えば、家電量販店の上新電機(本社:大阪市浪速区)が有名。
同社は、2003年からはシーズンを通して主催公式戦の「ヘルメット広告」をスポンサー契約。
2013年には球団史上初のオフィシャルスポンサー契約を締結し、2023年にはこれまでの右袖、キャップ、ヘルメットに加え、左胸にも「Joshin」ロゴを掲出したブレない体制で、タイガースを全面的にバックアップしてきた。
そんな同社は阪神の日本一が決まった翌日の深夜0時スタートというウェブショップでのセールで、スタートを迎える前にアクセスが集中しすぎてサーバーがダウンした。

よって戦略を変えて、仕事終りに、壊れたドラム式洗濯乾燥機を買い替えに、Joshinの店舗へ!

「パナソニックが良いよね、これセールではいくらになりますか?」

「えーっと、普段の値段のままです」

「何で?」

これが、これからの主流になる指定価格制度なのだ。
メーカーが指定した価格で販売を行ない、店舗主導による値下げや在庫処分時の値引き販売ができなくなる方式で、メーカーは販売店の在庫リスクについて責任を持ち、売れ残った商品の返品も可能にする仕組みだそうだ。

返品を可能にしていることから、独占禁止法には抵触しない。

パナソニックは、2020年度から一部商品で試験的な運用を開始し、現時点で、国内白物家電の約3割が、この制度による販売となっている。
先行したドラム式洗濯乾燥機では、販売金額の約8割が指定価格による販売だそうで、セールであろうが、どこで買っても同じ金額となる。
また2023年10月からは、日立ブランドも指定価格制度を導入した。

この2社が指定価格制度に乗り出した背景には、事業の健全性維持がある。白物家電は値下げが前提となっており、20%~40%引で販売される事が多い。メーカーでは、この販売価格を見直すために、毎年1回、新製品を投入し、値崩れした価格をもとに戻す。

だが、また在庫処分という形で大幅値引きが行なわれ、メーカーや販売店の利益を圧迫するという。
更に、昨今のECサイト利用率の高まりによって、益々、価格競争は激化し、メーカーや販売店にとっては、利益を確保する事が難しくなるのだ。

パナソニックは、業界全体として、事業の健全性を維持できなくなるのは明らかで、その問題意識をもとにスタートしたのが新販売スキームによる流通改革であり、価値があるものを、価値に見合った価格で流通させることが狙いである、とコメント。

「内容は分かりましたが、結局、安くならないのですね?」

値段交渉をやる気満々で、電卓の画面になっていたスマホを隠して、今日は帰る事にした。
この制度が消費者に馴染むかどうかは分からないが、金額が高い安いより、本質的に、その商品自体の価値を見極める思考に戻る事が必要なのだと考える。
その上で、店舗としても、本質的な接客やサービス向上が問われるのだろう。

今日はセール等と考えず、本質的に、阪神タイガースの日本一を祝う。おめでとうございます!